神戸電子専門学校で講義してきました

1月19日、神戸電子専門学校でブランディングデザインと文字に関する講義を行って来ました。
きっかけは去年非常勤講師を務めている大阪デザイナー専門学校で行われた神戸電子との合同イベント「 ODC×KD PORTFOLIO PARTY」(デザインヒーロー和田さん主催)に参加させていただいた時でした。いつもの癖で文字に関する熱いトークを繰り広げてしまいました。(学生どん引きで最終的には「変態」呼ばわりされました(笑)。その後、神戸電子専門学校の学生さんから「文字のことをもっと詳しく教えて欲しい」と直接連絡が来たのです。
そのご縁で神戸電子専門学校で正式に講義を行うことになりました。初めは文字のことだけ喋ろうと思っていたのですが、神戸電子の担当の先生よりブランディングデザインのお話もして欲しいと言われ、文字との二本柱でいくことにしました。そこでせっかく文字のことを話すなら私の文字の師匠、カリグラファー清水裕子さんに文字のマニアックな話を展開してもらおうと思い急遽お声がけいたしました。
時間は3時間とたっぷりいただきとても楽しい講義ができました。
以下どんな内容だったかを簡単にまとめました。

私が行ってるデザインとは



デザインは問題を解決するための「手段」であり、制作することが「目的」になってはダメだと感じています。
問題のより良い解決が「目的」であり、その「手段」としてデザインを使うということです。そして本来デザインは、人や会社などを良い結果へと導くためのものですが、浅い理解で事を進めてしまったり使い方を誤ったりすると、その逆の結果を引き起こす可能性を持つもの、ある意味怖いものだと私は思っています。

デザインが必要とされている背景に何があるのか?依頼された要望が必ずしも真の問題解決につながらないと私が感じる場合、クライアントの要望そのままの依頼に応えないケースもあります。意外と、クライアント自身が問題を正しく把握できていないことがあるからです。

例えば、創業して間もない製造会社から「商品のパッケージを若者受けするデザインにリニューアルしたいです。デザインしてください。」という案件があるとします。
普通ならパッケージをデザインするのが仕事です。
ですが、私は「なぜパッケージを作り変える必要があるのですか?」とまずクライアントに問いかけます。そうすると「事業拡大のため新たな販路を開拓したい」という要望が返って来て、クライアントの真意がパッケージをリニューアルすることではなく、販路を開拓したいのだということに気がつくのです。つまり販路開拓が目的であり、パッケージをリニューアルすることは一つの手段だということになります。
するとパッケージをデザインするより先にやるべきことが見えてきたりします。
販路拡大の為には商品認知度を上げる必要があり、商品認知度を上げる為には商品のブランド力を上げる必要があります。
そうすると、ブランドの方向性をもう一度見つめ直す必要性が出て来たりします。結果、商品パッケージだけでなく、ブランドロゴやブランドを伝えるWebサイトのデザイン、ブランド認知度をあげるためのイベント、ターゲットに響くSNS発信の仕方、販路開拓のための展示会用ブースデザインなど様々な「手段」が出て来ます。
そこに優先順位をつけて制作していくのです。

もし元の要望だけに対応していれば、一時だけの目新しさにはつながっても根本的な問題解決にはならないどころか、場合によってはパッケージだけが一人歩きして商品や会社への信頼性を損なう結果にもなりかねません。

「問題を見つけ、解決に導くための適切な手段を提示する。」これがデザイナーのこれからの仕事だと感じています。学生にとって授業でやるデザインは作ることが目的になりがちです。今回、そんな学生たちに伝えるからこそ、デザインは手段だと講義で力説しました。正にも負にもなり得る「デザイン」の力を少しでも早いうちから知っておいて欲しいと願いつつ。私が行っている仕事のやり方は、あくまでひとつの例で、他にも良い方法や考え方があるかもしれません。

カリグラフィーとレターアーツ

まず、カリグラフィーの全体像をざっくりと紹介した動画「カリグラフィーとレターアーツ」(NPO法人 ジャパン・レターアーツ・フォーラム制作)をみんなに見てもらいました。※レターアーツは文字芸術という意味

基本的な道具と文字線の関係

ローマン体のHはなぜ横棒が細いのか、Aはなぜ右が太いのかなど、まずそこから清水さんに実演をまじえてお話していただきました。
それは使われていた道具に由来します。先に幅のある道具で角度をつけて書いていたため太さの違いが出たのです。書く前に生徒に向けてたびたび質問が飛び、みんな頭をフル回転して線の太さを予想しました。みなさん正解でしたね。さすが!



文字の歴史的背景からロゴの話まで

基本的な文字の成り立ちの説明の後、歴史的な文字の話をベースに、現代のロゴとの間にある関連性やお国柄が出る文字の話などについて解説していただきました。古い文字の資料には、現代につながる面白いものや見たことのない文字など様々なものが残っているそうです。

デザインと文字の濃密な3時間を通して皆さん目を輝かして聞いてくださり、私自身もとても楽しく過ごさせていただきました。
最後に、今回このような機会を用意してくださいました神戸電子専門学校の祇園先生・千さんありがとうございました。